視覚情報とヒューマンエラー

橋本進 著

人間が外界から受ける感覚情報の80%以上が視覚器官による。特に船舶の運航では顕著であり、人間工学的側面からみるとき、その特性に十分配慮しなければならない。本書は人間の特性のうち、「視覚」を中心に解説する。

書籍データ

発行年月 1996年11月
判型 A5
ページ数 216ページ
定価 3,520円(税込)
ISBNコード 978-4-303-72970-7

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概要

 「何たって見張りだ」
 この言葉は、われわれ船乗りが伝承してきた「船の安全運航」の秘訣である。見張りさえしっかりしていれば事故は起きないはずだ、見張りがすべてであるという言い伝えである。
 人間が外界から受け取るさまざまな感覚情報のうち、視覚器官による情報は80%以上を占めるといわれるが、特に船舶運航における情報の受容は「見張り」の言葉に代表されるように、ほとんどが視覚によるものである。
 船舶の運航を人間工学的な面から、人間-機械-環境システムと考えるとき、人間はその中心的な位置を占め、システムの目的や機能に適合するような活動(作業、労働)を行っている。しかし、もしそのシステムが人間の特性(形態的、機能的)に適合しなかったとすれば、そのシステムは作業をする人間に無理を強要することとなり、疲労やミス(ヒューマンエラー)あるいは傷害や疾病などの現象となって表面化し、ときにはそのシステム全体を無力化し、あるいは破壊するまでにいたる。したがって、人間の持つ特性をよく知ることが必要である。本書では、その特性のうちの「視覚」を中心にまとめたものである。
 本書が、船舶安全運航、海難防止の一助になれば幸いである。(「はじめに」より)

目次

第1章 序論
 1.1 海難
 1.2 ヒューマンエラーとその防止
 1.3 水上交通における視覚情報
第2章 光と色
 2.1 光
 2.2 色
第3章 眼の構造と機能
 3.1 眼の構造
 3.2 視力
 3.3 視野
 3.4 錐体と杆体
 3.5 光覚
 3.6 色覚
 3.7 両眼視
 3.8 調節
 3.9 屈折と矯正
 3.10 めがね
 3.11 望遠鏡
第4章 海上における薄明の明るさ
 4.1 薄明
 4.2 海上における薄明の明るさ
第5章 航海灯の視認
 5.1 航海灯
 5.2 航海灯の視認
第6章 灯浮標の見え方
 6.1 灯浮標
 6.2 カラーネーミング法
 6.3 灯浮標の見え方
第7章 見張り作業
 7.1 監視作業と視力
 7.2 見張り作業に影響する諸因
第8章 超高速船操縦者の見張り
 8.1 ジェットフォイル
 8.2 アイポインター
 8.3 ジェットフォイル操縦者の眼球運動
第9章 天体の観測
 9.1 天体高度の観測と船の位置
 9.2 観測誤差
 9.3 個人誤差
 9.4 天体と水平線の接触不良による誤差
 9.5 薄明時における水平線と星の視認
第10章 物標の方位測定
 10.1 方位測定の必要性
 10.2 昼間および夜間における方位測定
第11章 居眠り
 11.1 睡眠と脳波
 11.2 居眠りと海難
第12章 見張りのテクニック
 12.1 プロとアマの違い
 12.2 もう一つの見張り
 12.3 見張りの伝承
 12.4 見張りのテクニック