日米文化のはざまに生きて
―齋藤襄治論稿集
1952年から1971年まで駐日米国大使館文化顧問を務め、Modern Japanese Stories(ユネスコ編現代日本短篇集)に収められた井上靖『猟銃』、川端康成『水月』、坂口安吾『白痴』、平林たい子『人の命』、佐藤春夫『西斑牙犬の家』の5篇の英訳者である齋藤襄治が、折に触れて新聞、学会誌などに寄稿した評論、随筆その他をまとめた。
書籍データ
発行年月 | 2004年12月 |
判型 | A5上製 |
ページ数 | 312ページ |
定価 | 3,300円(税込) |
ISBNコード | 978-4-303-99070-1 |
概要
齋藤襄治が辿った多彩な足跡のなかで特筆されるべきは、1952年から71年までの駐日米国大使館文化顧問時代に果たされた日米間の文化交流への貢献です。敗戦(1945年)後の混沌の中にあって、いち早く「日本の心」を英語で海外に伝えることの重要性に着目した齋藤は、卓抜な英語力を駆使して、日本の文芸作品の翻訳を数多く手掛けました。それらの活動は、やがて、川端康成、三島由紀夫、井上靖などの日本人作家ばかりでなく、海外の文人・学者たちとの幅広い交歓・交友となって結実しました。本書に収録された数多くの交友録・追憶記は、その証しにほかなりませんが、それらの方々の多くが既に亡くなられた今となっては、日米文学史上の貴重な補遺資料ともなっています。また若き日の作である「守るも攻めるも」や「スミソニアン原爆展」「ヒロシマに寄せて」によって代表される作品群からは、この国に寄せる熱い思いと正義感が窺えます。総じて、掲載論稿の多くが豊かな詩情と暖かくかつ冷静な人間観照に裏打ちされた珠玉のような作品・論稿であること、さらにはそれらが時代を超えて現代への警醒ともなっていることに深い感銘を覚えます。
目次
第1部 評論・随筆・随想・論文など
1.日米文化のはざまに生きて
2.文学と演劇の間
3.ニューイングランドの四季
4.アメリカの友だち
5.守るも攻めるも
6.聖書のアフォリズム
7.遥かなる旅─野坂穣遺稿集─
8.わがPRAETERITA
9.ある英語教師の告白
10.別れ
11.俳句の英訳を中心として
12.梅雨の夜のつれづれに
13.外国語への日本語の翻訳
14.雲についての断章
15.外国人の見た江戸
16.国際的知識人としての朝河貫一
17.ニューイングランド墓碑銘考
18.翻訳と文体―わがPRAETERITA―
19.スミソニアン原爆展をめぐって
20.伊良湖岬への旅
21.雲に寄せて
22.興津水口屋と私
第2部 追憶・回想記
1.フロストのことども
2.悲しい遺品
3.渡辺昭宏氏と私の縁
4.ヘレン・ヘイズを偲ぶ
5.川端康成の思い出
6.回想の三島由紀夫
7.フォークナーの思い出
8.思い出す人々―佐伯彰一・イーストマン・大木惇夫など
9.江藤淳・辻邦生・青山光二などの思い出
10.青野季吉のこと
11.阿部知二の思い出
12.隠岐の旅―ポール・ブルームの思い出
13.星をうたった二人の文人―野尻抱影と山口誓子―
14.軽井沢に生きた詩人―野上彰のことども―
15.佐々木邦の思い出
16.山本有三の思い出
17.井上靖の思い出(一)
18.井上靖の思い出(二)
19.吉田絃二郎覚え書
20.放浪画家山下清の思い出
21.宇野信夫を偲ぶ
第3部 書評
付 録 齋藤謙三と齋藤塾