2003年国際満載喫水線条約

(英和対訳)

国土交通省海事局安全基準課 監修

【収録内容】
◆1966年の満載喫水線に関する国際条約
◆1966年の満載喫水線に関する国際条約の1988年の議定書
◆1966年の満載喫水線に関する国際条約に係る1988年議定書の改正《2005年1月1日発効》
◆決議MSC.172(79)《2006年7月1日発効予定》

書籍データ

発行年月 2006年2月
判型 A5
ページ数 456ページ
定価 11,000円(税込)
ISBNコード 978-4-303-38380-0

amazon 7net

概要

 満載喫水線に関する基準は、船舶の安全性に関する最も基本的な要件として、過積載を防ぎ十分な浮力を確保することを目的とするものであり、国際的な基準として長い歴史を有している。
 これまでの流れを概観すると、1920年代に、国際海運における過当競争の結果、過積載に起因する事故が頻発したことから、1930年にロンドンで開催された国際会議において、当該船舶の形状及び強度の面から乾舷を決定し載貨の限度を定める最初の国際条約が採択された。その後、造船技術の進歩に伴い、1966年に国際海事機関(IMO)において、船内浸水に対する更なる防止対策を講じること、十分な損傷時復原性を確保すること等により1930年の条約よりも小さい乾舷を許容する新たな条約が採択された。この1966年の満載喫水線に関する国際条約は1968年に発効し、さらに、1988年にはその議定書が採択されて2000年に発効している。
 1988年の議定書に対して2003年に採択された改正は、当該議定書の発効後、初めての改正であり、主としてこれまで不十分であるとされていた技術要件を明確にすることに加え、1980年に発生したダービーシャー号の沈没事故を契機として検討された、ハッチカバー及び船首部を保護するための要件が強化された。
 このように満載喫水線に関する条約改正の経緯は複雑であるが、今般、1966年の採択から40年を迎える現行の満載喫水線に関する国際条約について、その修正・改正から最新の内容までが盛り込まれた本書が刊行されることは、海運及び造船界をはじめとする関係各位に同条約への理解を深めて頂くために意義深いものであり、本書の活用が船舶の一層の安全性向上に寄与することを期待する次第である。(「はしがき」より)

その他

LL 1966及びその正訳
1966年(昭和41年)、政府間海事協議機関(IMCO、後の国際海事機関[IMO])は、ロンドンにおいて、「1966年の満載喫水線に関する国際会議」を開催した(参加52カ国)。これは、船舶の大型化、水中翼船等新型式の船舶の出現、鋼製ハッチカバーの採用等造船技術の発達に伴い、1930年の国際満載喫水線条約を見直し、新しい条約を制定するためであった。なお、この際、世界の造船及び海運の分野において高い地位を占める我が国も積極的に参加し、提案の多くが採用された。
この会議において採択されたのが、「1966年の満載喫水線に関する国際条約」(LL 1966)である。LL 1966は1968年(昭和43年)7月21日に発効し、我が国についても、同年8月15日に効力を生じた。34の条と3つの附属書で構成されるLL 1966は、現在、総トン数において世界の商船船腹量の98.76%を支配する156カ国が締約国となっている。

LL Protocol 1988及びその正訳
1988年(昭和63年)、IMOは、検査と証書の調和制度に関する国際会議を開催した。これは、「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS 74)及びLL 1966の、検査及び証書に関する規定を調和のとれたものとすることを目的としたものであり、各条約について1988年議定書が採択された。また、この1988年議定書による修正の結果、満載喫水線に関する技術要件についても、タシット方式に基づく改正が可能となった。これは、科学技術の進歩に合わせて随時速やかに見直しできるよう、技術要件の改正の採択から発効までの手続きを簡略化するものである。
「1966年の満載喫水線に関する国際条約の1988年の議定書」(LL Protocol 1988)は、2000年(平成12年)2月3日に発効した。LL Protocol 1988では、附属書AにLL 1966の条の修正、また附属書BにLL 1966の附属書I~IIIの修正が規定されている。本書には、議定書による修正を反映させた条と附属書I~IIIを掲載した。なお、LL Protocol 1988による修正部分には「P88」を付している

決議MSC.143(77)及びその仮訳
2003年(平成15年)には、決議MSC.143(77)によるLL Protocol 1988の附属書Bの改正が行われ、2005年(平成17年)1月1日に発効した。当該改正は、LL Protocol 1988の発効後、初めての技術要件の改正であり、主としてこれまで不十分であるとされていた技術要件を明確にするものであり、船舶の強度と非損傷時復原性を確保すべきことが言及された他、定義や乾舷の修正方法もより明確となっている。また、1980年に沈没したダービーシャー号の事故を契機として検討されていたハッチカバー及び船首部を保護するための要件の強化が採用された。これにより、LL 1966の附属書Iが全面改正されるとともに、附属書IIの一部が改正された。

付録:決議MSC.172(79)及びその仮訳
2004年(平成16年)12月9日、決議MSC.172(79)により条約附属書III(証書)の改正が採択された。この改正は、2006年(平成18年)7月1日に効力を生じることとなっている。