北東アジア観光の潮流

大薮 多可志・大内 東 編

21世紀はアジアの世紀、観光の世紀と呼ばれ、国土交通省を中心としてビジット・ジャパン・キャンペーンも行われる中、アジアにおける交流人口が急速に拡大している。本書は地方自治体担当者、観光産業関係者、観光学を専攻する学生向けに、北東アジアを中心とした観光交流について専門家がさまざまな視点から示唆を与える。

書籍データ

発行年月 2008年4月
判型 A5
ページ数 256ページ
定価 2,970円(税込)
ISBNコード ISBN978-4-303-56300-4

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概要

 経済圏がいくつかのグループに分割されるとともに観光動向も変化しつつあります。観光や環境分野におけるこれら経済圏の取り組みは、圏内のGDPなど経済指標にも強く影響を受けます。現在、北アメリカ(NAFTA)、ヨーロッパ(EU)、アジア(AU)、アフリカ(AU)、南アメリカ(メルコスール)などが一つの経済圏を構築し、各国の経済や観光交流を連携して改善・推進する努力がなされています。21世紀はアジアの世紀と称されています。将来を目して東アジアサミットが開催され、環境問題を中心に議論が行われ成果を上げつつあるところです。また、今世紀は観光の世紀とも呼ばれ、アジアにおける交流人口が指数関数的に拡大してきています。2003年4月に、日本において国土交通省が中心となりビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)が始まりました。これは、2010年までに訪日外国人が1000万人に達することを目標としたものです。日本の交流人口の増加は、このVJC政策によるものです。この目標を達成するためには、アジア圏からの交流人口拡大を図ることが必須です。2008年は全訪日外国人900万人(2006年は735万人)が推定され、順調に目標に向かって進行しつつあります。この目標達成にはテロや地震など災害がなく、観光地が安全・安心・快適な環境を維持していることが重要です。安全・安心な環境を維持するためにも気軽に訪問できる観光交流が重要です。地方の観光地においてもVJCの趣旨に連動し政策を構築していくべきです。アジア地域、とくに北東アジア地域においては経済や観光などの連携が可能な歴史的土壌を有しています。今世紀はアジアの世紀であり、まず、北東アジアを中心とした観光交流についてさまざまな視点から示唆を与える必要があります。
 国境を越えた観光交流促進には、情報技術(IT)の利用が必須です。インターネットを利用した宿泊施設や観光施設利用予約、それほど知られていない海外観光地調査などにかなり利用されています。メジャーでない観光地もインターネットを利用すれば平等に情報を発信することができます。携帯電話や携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)を利用し観光情報を入手するシステムも構築されてきています。ICタグやQRコードなどを利用することにより地域ごとの詳細な情報が簡単に入手できます。地震など災害が発生すると復旧に時間が掛かり国内外訪問者の減少が続き、観光産業にとって大きな痛手となります。現状を瞬時に発信し風評被害などを軽減するのがインターネットをコアとした情報技術です。2007年に発生した能登半島・中越沖地震においても観光地の情報発信が重要な役割を果たしました。
 本書は、「北東アジア観光」という括りでさまざまな視点から専門の意見を記述したものです。学問として「観光」は緒についたばかりです。観光産業に携わる方、観光を専攻する学生諸君の参考になれば幸いです。(「まえがき」より)

目次

第1章 中日間観光交流の促進策
 1.1 国民の国際観光交流への期待
 1.2 政府の国際観光交流への期待
 1.3 中日観光交流のモデル
 1.4 中日観光交流の技術的ポイント
 1.5 これからの政策

第2章 コラボ型ランドオペレーター機能の確立による観光交流の拡大
 2.1 北東アジア圏内における国際観光交流の実態
 2.2 潜在需要の規模とランドオペレーターの必要性
 2.3 ランドオペレーターの実態とその機能の検討
 2.4 “国内観光空洞化”を越えて
 2.5 観光産業における外資系企業の動向と

第3章 自律的な観光による持続可能な地域づくり
 3.1 観光と地域のかかわり
 3.2 エコツーリズムへの期待

第4章 日本の自然と地域観光振興
 4.1 観光の現状
 4.2 自然を対象とした観光の目覚ましい発展
 4.3 環境観光における「自然」
 4.4 日本の自然
 4.5 観光と地域振興
 4.6 日本における環境にやさしい観光
 4.7 美山町の事例
 4.8 これからの環境観光と地域振興

第5章 外国人観光客の増加と地域の活性化
 5.1 外国からの観光客
 5.2 ビジット・ジャパン計画
 5.3 外国からの観光客誘致の問題点
 5.4 考察
 5.5 外国人観光客のための多言語標識
 5.6 東京都の多言語標識の方針から学ぶもの
 5.7 ホームページとパンフレットの意味

第6章 兼六園における外国人観光客の動向と言語景観調査
 6.1 金沢兼六園の沿革
 6.2 兼六園の入園者数
 6.3 外国人訪問者数
 6.4 言語景観調査項目
 6.5 看板の下限達成度
 6.6 ピクトグラム

第7章 韓国人観光客の動向と北陸地域との観光交流推進策
 7.1 訪日韓国人の動向
 7.2 韓国人海外旅行者の現状
 7.3 北陸地域の観光資源と誘致策
 7.4 韓国の観光資源の現状と交流推進策

第8章 北陸地域と台湾間の観光交流の現状と推進策
 8.1 金沢兼六園
 8.2 立山黒部アルペンルート
 8.3 高山市
 8.4 白川村
 8.5 台湾観光客にとって魅力ある資源
 8.6 北陸地域における推奨スポット

第9章 中国・東北地域の観光資源概観
 9.1 東北三省の観光資源
 9.2 中国旅行業界の問題点

第10章 観光産業による地域の持続的発展
 10.1 観光産業の可能性を探る
 10.2 食との連携による観光産業の可能性

第11章 個人の嗜好に合わせた観光情報推薦システム
 11.1 インターネットと観光情報
 11.2 情報の洪水
 11.3 観光地推薦システム

第12章 インターネット宿泊予約サイトに見る観光業界におけるIT革命
 12.1 IT社会
 12.2 観光
 12.3 観光におけるIT革命
 12.4 宿泊業におけるB・Cビジネスモデル