ラフ集合の感性工学への応用
日本感性工学会出版賞受賞(2010年度)
人間の感性という視点から商品開発やサービス開発、製品デザインなどを行う際の手法であるラフ集合理論の、感性工学に関する応用事例集。企業関係者などにも参考になる身近な事例を選出。ラフ集合の新しい考え方である可変精度ラフ集合についても詳しく紹介。ラフ集合ソフト(別売)使用法の解説付。
書籍データ
発行年月 | 2009年12月 |
判型 | A5 |
ページ数 | 256ページ |
定価 | 3,080円(税込) |
ISBNコード | 978-4-303-72393-4 |
概要
近年、人間の感性という視点からの商品開発やサービス開発、製品デザインなどが盛んになってきている。そこで、1998年に日本感性工学会が設立された。そして、今日、その設立から10年程を過ぎ、感性に関する研究の裾野は年ごとに広がりつつある。その感性研究の中で、今後の発展が期待されている手法のひとつがラフ集合理論である。筆者らが執筆した日本で最初のラフ集合の啓蒙書である『ラフ集合と感性』(海文堂出版、2004年、本書の姉妹書)を刊行してから、ラフ集合は、大学の研究者だけでなく、多くの企業関係者などにも知られるようになった。
それらの読者の中から、ラフ集合の感性工学に関する事例集の出版を希望する声が上がってきた。その反響を受けて、今後のさらなるラフ集合の応用研究が広がることを期待して本書は企画された。そこで、ラフ集合の応用範囲をより拡大するために、日本感性工学会あいまいと感性研究部会で発表された事例研究を中心に、読者に身近な事例(第2章~第4章)を選出した。したがって、感性研究に関係の薄い企業の人々にも読みやすい事例となっている。また姉妹書の読者で、ラフ集合の新しい考え方を求めている方々には、第7章で応用のはじまりつつある可変精度ラフ集合についても詳しく紹介する。
一方、理論的な専門書では、一般にその理論についての歴史が序章で解説されている。しかし、残念ながら、ラフ集合の専門書が日本ではまだ刊行されていないため、本書の第1章で、ラフ集合の理論が日本でどのように普及してきたかの歩みについて書いた。この内容が、これからラフ集合を学ぼうとする多くの読者の参考になると考える。また、これからラフ集合の研究者を目指す読者の便宜を図るために、国内および海外の多くの参考文献を巻末に載せてある。
ところで、新しい理論の応用研究を増やすためには、その手法のソフトウェアの配布は重要な役割を果たす。姉妹書でも手法のソフトウェアをWebサイトから配布する環境を整えたことから、多くの読者からの購入希望が寄せられた。しかし、当時のパソコンの処理能力の関係から、入力データの大きさに制限を設けたため、読者からその改善の要望が多く届いた。今回は、その後のパソコンの処理能力の著しい向上から、内部メモリ容量のハード面での制限以外、ソフトウェア上の制限は取り外した。また、決定表の縮約(決定ルール)だけでなく情報表の縮約も追加した。なお、詳しくは第5章に記してある。
さらに、新たに紹介する可変精度ラフ集合なども解説だけでなく、そのソフトウェアも制作し、その使用法も第7章の末に加えた。また、ラフ集合の計算において、決定表の中の決定クラスを推定する方法は結果に大きく関係するため、第6章にその決定クラスの推定法についての解説も加えてある。そして、それらのソフトウェアの具体的な入手方法は巻末の付録②に記してある。なお、姉妹書で紹介した同じWebサイトから入手できる。
以上のように、本書はラフ集合の感性研究への適用研究と実務への応用をより推進するために企画されたものである。(「はじめに」より)
目次
第1章 ラフ集合研究の歩みとその理論
第2章 応用事例 <デザイン>
第1節 ラフ集合によるWebデザイン仕様決定
第2節 製品のデザインコンセプト策定法 ― 照明器具デザインを事例に
第3節 入りやすい店舗デザイン
第3章 応用事例 <システム>
第1節 「かっこいいスーツ」の選択支援システム
第2節 革靴の選択支援システム
第3節 ラフ集合のWeb販売システムへの応用
第4章 応用事例 <分析>
第1節 ラフ集合によるピクトグラムの特徴抽出
第2節 ラフ集合と数量化理論第II類による腕時計の選好分析
第3節 家電製品の視覚的な使いやすさの分析
第4節 ラフ集合によるユーザビリティ評価手法
第5章 ラフ集合ソフトウェアの使用方法
第6章 決定クラスの推定法
第7章 可変精度ラフ集合
付録1 ラフ集合の基礎
付録2 ソフトウェアの入手方法