誰もがデザインする時代
デザイン3.0の教科書
新時代に対応したデザイン3.0に活用できる教科書。誰もがデザインする時代のいま、どんなモノ、システムにも対応可能な汎用システムデザインプロセスに基づき解説。知識、論理性、可視化のそれぞれの能力を向上させ、発想力を高められるように構成。
書籍データ
発行年月 | 2018年10月 |
判型 | 四六 |
ページ数 | 160ページ |
定価 | 1,650円(税込) |
ISBNコード | 978-4-303-72723-9 |
概要
21世紀に入り,発想力がモノづくりに重要な要素となっている。製品がコモディティ化し,独自の価値ある製品,システムをつくらざるを得なくなっているからである。この場合,一部の専門家のみが発想するのではなく,関係者全員で(あるいは,ユーザも巻き込んで)発想することで幅広いアイデアが生まれ,オリジナリティの高い製品,システムを市場に提供することが可能となる。
本書は21世紀の新時代に対応したデザイン(デザイン3.0)に対応すべく,デザイナー,エンジニア,プランナーなどの専門家だけでなく,ビジネスマンの誰もが,知識,論理性,可視化のそれぞれの能力を向上させ,最終的に発想力を高め,デザインできるように構成されている。そのため,属人的要素の強い既存のデザイン手法を避け,誰でも使用するのが可能な各種フレームによりデザインできるシステムデザイン方法(汎用システムデザインプロセス)に基づいている。この方法は面倒な手順を踏むので,一見とっつきにくいかもしれないが,マスターすれば汎用なので,どんなモノ,システムについても容易に活用できる。例として,鶴亀算と方程式で考えると,鶴亀算は所定の方法はなく,属人性の強い方法であるのに対して,方程式はある手順に従えば,誰でも簡単に計算できる方法である。鶴亀算は既存のデザイン方法で,方程式は汎用システムデザインプロセスともいえる。
本書の基本的な考えかたは,生活者の視点に立ちユーザ要求事項を抽出し,これを論理的に展開し製品・システムのデザインにまとめ上げることである。文中で紹介している汎用システムデザインの方法はデザイン1.0からデザイン3.0で活用できるデザイン方法である。
本書では①知識,②論理性,③可視化能力に基づき発想力が身につくという構造を考えている。以下,その理由を述べる。
(1)知識
知識を獲得することにより,見えなかった世界が見えるようになる。本書では9章でさまざまなインタフェースや人間工学系の用語を紹介しているので,これらをマスターするといままで気が付かなかったことがわかるようになる。同様に,デザインする際にも役立つ。たとえば,人間–機械系のインタフェースをデザインする際,身体的側面のフィット性という検討すべき項目がある。この知識を知っていると,凸状のスイッチは指が滑るので避けたほうがよいと判断することができる。
(2)論理性
論理性に関して,物事やシステムを構造的に理解,あるいは構築することができるようになる。2章で紹介する汎用システムデザインプロセスや6章の構造化コンセプトなどは構造的に物事などを理解,構築するのに効果的である。
(3)可視化能力
可視化能力とは頭の中のイメージを絵,イラストにすることができるということである。可視化能力があるとビジネスの打ち合わせなどのとき,絵,イラストを描くことにより,効率の良いコミュニケーションが可能となる。若いころ食卓用照明器具をデザインし,カタログをつくることになった。食卓のシーンのスケッチを関係者に渡し,打ち合わせを行ったのだが,意見が食い違うので,絵を描いてくれないかと頼んだ。しかし,絵ではなく口頭の説明のみで,お互いに理解するのに大変時間がかかった。10章に造形方法が記述されているので確認してほしい。
(4)発想力
以上の知識,論理性,可視化能力を構築することにより,発想力を高めることができる。伝統的発想法も良いが,本書ではそれらと異なる方法(再定義による方法)を提案している。コーヒーカップを例にとると,伝統的発想法は使用環境,使用状況,その形状などから発想する方法で,コーヒーカップのバリエーションを発想していく仕組みともいえる。一方,本書で提案している方法は,コーヒーカップの本質は何かと考えていく方法である。3章を参考にされたい。(「まえがき」より抜粋)
目次
1章 デザインとは
1.1 デザインの歴史と広がるデザインの世界
1.2 冷たいデザイン・温かいデザインとデザイン1.0,2.0,3.0の世界
1.3 企画やデザインがモノづくりで重要になっている
1.4 デザインの定義
1.5 デザインの構造
2章 汎用システムデザインプロセスの概要
2.1 使いづらい製品が多くある
2.2 汎用システムデザインの基本的な考えかた
2.3 汎用システムデザインのプロセス
3章 発想する
3.1 発想方法
3.2 再定義を行う
3.3 伝統的発想法
3.4 伝統的発想法と再定義による発想法
4章 システムの概要を決める
4.1 企業や組織の理念の確認
4.2 大まかな枠組みの検討
4.3 目的,目標の決定
4.4 システム計画の概要
4.5 まとめ
5章 システムの詳細を決める
5.1 市場でのポジショニング
5.2 ユーザ要求事項の抽出
5.3 観察方法
5.4 インタビュー方法
5.5 タスクに注目した方法
5.6 システムに注目した方法:REM
6章 コンセプト,ビジネスモデルを構築する
6.1 構造化コンセプト
6.2 ユーザとシステムの明確化(仕様書)
6.3 ダイヤ型ビジネスモデル
7章 可視化
7.1 可視化方法
7.2 可視化するためのさまざまな手段
8章 評価
9章 デザイン知識とさまざまなデザイン
9.1 目的
9.2 情報デザイン
9.3 ユニバーサルデザイン
9.4 エコロジーデザイン
9.5 サービスデザイン
9.6 その他のデザイン項目
9.7 産業財産権
10章 造形方法
10.1 造形の基本
10.2 立体造形の基本
10.3 平面造形の基本
11章 事例
11.1 取っ手付きコップの製品開発
11.2 旅行者向けの貸し出しサービスの開発
プロフィール
山岡俊樹(やまおかとしき)
京都女子大家政学部生活造形学科教授(学術博士),和歌山大学名誉教授
専門
サービスデザイン,人間工学(日本人間工学会認定 人間工学専門家),ユーザインタフェースデザイン,工業デザイン,ユニバーサルデザイン,製品開発,観察工学
米国人間工学会(HFES),Universal Access in the Information Society(UAIS)Journalのeditorなどを担当