Safety-IIの実践
―レジリエンスポテンシャルを強化する
Safety-IIの狙いは、単なるハザードの削減、失敗や不具合の防止ではなく、組織のレジリエンスパフォーマンスのポテンシャルを最も高めることにある。そのポテンシャルとは、対応、監視、学習、予見のしかたである。本書では、RAGと呼ばれるSafety-IIマネジメントのアプローチを紹介し、その用いかたを実践的に説明する。
書籍データ
発行年月 | 2019年3月 |
判型 | A5 |
ページ数 | 208ページ |
定価 | 2,970円(税込) |
ISBNコード | 978-4-303-72986-8 |
概要
本書の目的は,Safety-IIをマネジメントするのに使える概念や方法を提示することである。言い換えれば,ある組織が全体としてどのように機能するのかということを改善する概念や方法を提示することであり,単にリスクや災厄「からの解放」という見かたの安全に限るものではない。第1章,第2章では安全マネジメントとレジリエンスエンジニアリングについて,簡潔で一般的な紹介を行う。第3章では,レジリエントな挙動の性質について論じ,レジリエンスポテンシャルという概念を導入する。第4章,第5章では,レジリエンスポテンシャルを詳細に説明するとともに,それらがどのようにして評価できるかを述べる。レジリエンスポテンシャルが全体としてどのように機能するのかを理解することが重要であることから,第6章ではレジリエント挙動の機能的モデルを導入する。これに基づいて第7章では,組織の挙動をマネジメントし,レジリエンスポテンシャルを強化するための全体的戦略を示す。そして第8章では変化しつつある安全の様相と進むべき道程についての示唆を与える。(「まえがき」より)
目次
第1章 2016年からの安全マネジメント
1.1 そこにないもののマネジメント
1.2 安全マネジメント:細部へのこだわり
1.3 スナップショットに目を向けた安全マネジメント
1.4 日常の業務に基づく安全マネジメント
1.5 Safety-IとSafety-II
1.6 解毒剤としての安全
第2章 「レジリエンス」は何を意味するのか?
2.1 概念としてのレジリエンスの起源
2.2 ネガティブな意味合い
2.3 私の組織はどれぐらいレジリエントなのか?
第3章 レジリエントなパフォーマンスの基礎
3.1 想定される仕事と実際の仕事
3.2 個人か?あるいは組織の「仕組み」か?
3.3 個人のパフォーマンスから文化へ
3.4 レジリエンスのポテンシャル
3.5 中休みとして:モノリシックな説明
第4章 レジリエンスポテンシャル
4.1 対処するポテンシャル
4.2 対処するポテンシャルの特徴
4.3 監視するポテンシャル
4.4 監視するポテンシャルの特徴
4.5 学習するポテンシャル
4.6 学習するポテンシャルの特徴
4.7 予見するポテンシャル
4.8 予見するポテンシャルの特徴
4.9 予見するポテンシャルの関連事項
4.10 他のポテンシャルはあるのか?
第5章 RAG―レジリエンス評価グリッド
5.1 プロセスマネジメントの基本要件
5.2 測定か評価か?
5.3 4つのポテンシャルの評価
5.4 対処するポテンシャル
5.5 監視するポテンシャル
5.6 学習するポテンシャル
5.7 予見するポテンシャル
5.8 間接的な評価尺度
5.9 評価結果をどのように提示するか
5.10 診断的かつ形成的質問群
5.11 レジリエントなパフォーマンスのポテンシャルをマネジメントするためにRAGを使う方法
第6章 RAG―レジリエントなパフォーマンスのモデルへ
6.1 組織の構造モデル
6.2 組織がどのように働くかについての機能モデル
6.3 詳細モデル
6.4 モデルの最終形
6.5 レジリエンスポテンシャルの汎用モデル
第7章 レジリエンスポテンシャルの発展
7.1 組織文化を変える(第1の方法)
7.2 実践を変える(第2の方法)
7.3 第3の方法
7.4 「機能不全」組織と「レジリエント」な組織
7.5 監視するポテンシャルを発展させる
7.6 学習するポテンシャルを発展させる
7.7 予見するポテンシャルを発展させる
7.8 レジリエンスポテンシャルを発展させる方法を選択する
7.9 レジリエンスポテンシャルをマネジメントする
7.10 RAGの活用
第8章 変化する安全の様相
8.1 測定の変化する様相
8.2 安全文化の変化する様相
付録 FRAMの初歩
第1の原理:成功と失敗の同等性
第2の原理:おおよその調整
第3の原理:発現するアウトカム
第4の原理:機能共鳴
FRAMモデルの開発における基本的な概念
上流と下流の機能
FRAMモデルの図的表現
プロフィール
北村正晴
1942年生まれ。東北大学大学院工学研究科原子核工学専攻博士後期課程修了。工学博士。同大学助手,助教授を経て1992年東北大学工学部原子核工学科教授,2000年同研究科技術社会システム専攻リスク評価・管理学分野を担当。2005年定年退職,東北大学名誉教授。現在(株)テムス研究所代表取締役所長。専門は,技術システムの安全性向上,大規模システムにおける人間・機械の協調,原子力技術に対する社会の受容性等。
小松原明哲
1957年生まれ。早稲田大学理工学部工業経営学科,同大学院博士後期課程修了。博士(工学)。金沢工業大学講師,助教授,教授を経て,2004年4月から早稲田大学理工学術院創造理工学部経営システム工学科教授。専門は人間生活工学。
<訳者>
狩川大輔 東北大学大学院工学研究科
菅野太郎 東京大学大学院工学系研究科
高橋 信 東北大学大学院工学研究科
中西美和 慶應義塾大学理工学部
松井裕子 原子力安全システム研究所社会システム研究所
その他
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