モーダルシフトと内航海運
昨今のドライバー不足への対策や、災害時に備えた輸送モードの多重化として注目を浴びているモーダルシフト。そのうち、内航海運へのモーダルシフトに焦点を当て、環境問題における役割、物流政策との関係、さらなる進展のための課題、船種ごとの輸送特性と競争関係について解説。また、海外の政策や国内の取り組み事例を紹介。
書籍データ
発行年月 | 2020年4月 |
判型 | A5 |
ページ数 | 168ページ |
定価 | 2,530円(税込) |
ISBNコード | 978-4-303-16418-8 |
概要
近年,社会の電子化とそれに伴うネット通販の急速な拡大を背景に貨物の小口化,輸送の多頻度化が進んでいます。2016(平成28)年の宅配取扱個数は40 億個を超えました。一方で,トラックドライバーの労働条件は,労働時間,賃金のいずれにおいても全産業の中で最低の水準にあり,若い労働者からは敬遠され,トラックドライバーの高齢化も進んでいます。宅配便を中心にトラックドライバーの不足が社会問題として取り上げられ,大手宅配事業者を中心に,料金の値上げや取扱貨物の数量規制などの対策を取るところも現れています。
また,毎年のように発生する自然災害による物流への影響も見逃すことが出来ません。その対策として日ごろから輸送モードの複数化を図る荷主が増えているようです。こうした状況に加えて,2016 年改正物流総合効率化法の実施による政府の後押しもあり,輸送手段をトラックから鉄道や船舶に切り替える,いわゆるモーダルシフトの動きが顕著になっています。
これまで停滞していたモーダルシフトが再び動き出しました。その背景は,ドライバー不足や自然災害対策などです。モーダルシフトは時代によって,環境対策であったり,省エネであったりとその取り組みの理由はさまざまでした。このように時代によって違いはありましたが,再びモーダルシフトに注目が集まっています。荷主の物流に対する考え方にも徐々に変化が表れているように見られます。こうした動きは,もう一度モーダルシフトについての認識を新たにする良い機会であると考えます。本書は,環境との関係,モーダルシフトの受け皿としてのフェリーやRORO船,あるいは他国の事例など,モーダルシフトをそれぞれ違った視点からアプローチした内容となっています。
本書が,関係する多くの方にとってモーダルシフトを考える契機に,そしてさらに深い理解への一助となれば幸いです。
(「はしがき」より抜粋)
目次
序 章
1 貨物輸送の現況とモーダルシフト
2 モーダルシフトが求められる理由
3 船舶輸送の特徴と課題
第1 章 環境対策としてのモーダルシフト
1.1 はじめに
1.2 環境問題とは
1.3 環境問題と物流
1.4 モーダルシフトの目的とその変遷
1.5 モーダルシフトの担い手
1.6 環境対策としてのモーダルシフトの今後
1.7 まとめ
第2 章 荷主と物流事業者の連携による輸送網集約の効果と可能性
2.1 はじめに
2.2 物流総合効率化法
2.3 物流総合効率化法による取り組み事例
2.4 京阪神都市圏における物流施設の立地分析による輸送網集約の可能性
2.5 まとめ
第3 章 内航海運へのモーダルシフトの課題
3.1 はじめに
3.2 モーダルシフト政策の展開
3.3 輸送手段分担モデルによる分析
3.4 ターミナル改良の事例
3.5 総合的ビジョンの必要性
3.6 まとめ
第4 章 内航船とトラックの種別を考慮したモーダルシフト分析
4.1 はじめに
4.2 過去の研究事例
4.3 物流センサスデータの特徴と輸送距離データ
4.4 モーダルシフト対象船の特徴
4.5 トラックと内航船の輸送機関分担モデル
4.6 まとめ
第5 章 RORO船とフェリーの棲み分けおよび競争
5.1 はじめに
5.2 過去の研究事例
5.3 船舶の特徴から見た市場の棲み分けと競争
5.4 市場を巡る環境変化と競争関係
5.5 まとめ
第6 章 海外のモーダルシフト政策
6.1 はじめに
6.2 EU におけるモーダルシフト
6.3 中国におけるモーダルシフト
6.4 まとめ
第7 章 モーダルシフト事例
7.1 はじめに
7.2 ワコール流通株式会社
7.3 ニチレイロジグループ
7.4 ライオン株式会社
7.5 シャープジャスダロジスティクス株式会社
7.6 味の素株式会社
7.7 その他の企業のモーダルシフトへの取り組み
7.8 まとめ
プロフィール
森 隆 行(流通科学大学教授) はしがき,第1章,第7章
松尾 俊彦(大阪商業大学教授) 序章,第5章
田中 康仁(流通科学大学准教授) 第2章
石田 信博(同志社大学教授) 第3章
永岩健一郎(広島商船高等専門学校教授) 第4章
石黒 一彦(神戸大学大学院准教授) 第6章
その他
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