水産と海洋の科学
2訂版
水産高等学校の科目「水産海洋科学」の教科書として使用されることを前提に、文部科学省の新指導要領に沿って構成された改訂版。海洋と生活/海洋の科学/水産の新しい展開について、各分野の専門家が最新の知見を含めて、豊富な図と写真で解説。「海」に関心を持つすべての人に読んでもらいたい内容となっている。
[2022年12月、初版発行]
書籍データ
発行年月 | 2022年12月 |
判型 | B5 |
ページ数 | 188ページ |
定価 | 2,200円(税込) |
ISBNコード | 978-4-303-11491-6 |
概要
地球表面の7割を占める海は、人類にとって重要な動物性タンパク質供給源となる水産物やエネルギー資源など多くの恵みをもたらし、世界的に人口が増加する中で、その依存度はますます高まっている。しかし、一方で、このことが無秩序な漁獲や海洋開発によって生態系や海洋環境に深刻な影響を及ぼし、地球規模で対策を講じなければならない問題となっている。そのため日本をはじめ多くの国々では、水産資源の持続的利用の促進や海洋環境の保全に関する具体的施策に取り組んでいる。
このような状況において、水産業や海洋関連産業のスペシャリストとして活躍するためには、広い視野で水産や海洋についての知識を深め、食料、エネルギー、海上輸送及び環境などに起因する諸課題を客観的に理解するとともに、探究する姿勢に加え、グローバルな視点をもって持続的な産業振興に主体的かつ協働的に取り組む態度が求められている。
したがってこの科目では、水産の見方・考え方を働かせ、実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通して、水産業や海洋関連産業において必要となる資質・能力を次のとおり育成することをねらいとしている。
・水産や海洋について体系的・系統的に理解するとともに、関連する技術を身に付けるようにすること。
・科学的な視点で水産や海洋に関する課題を発見し、水産業や海洋関連産業に関わる者として合理的かつ創造的に解決する力を養うこと。
・水産業や海洋関連産業の充実を目指して自ら学び、グローバルな視点をもって地域の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うこと。
本書は、平成30年3月30日に告示された高等学校学習指導要領に準拠し、高等学校の教科水産における科目「水産海洋科学」で活用されることを想定して編集したものである。
また、本書の内容及び構成は、2~4単位程度履修されることを想定し、次のように編集した。
第1章 海洋と生活
第2章 海洋の科学
第3章 水産の新しい展開
第4章 海洋に関する探究活動
本書の特徴として、主体的・対話的で深い学びの実現に向け、海洋に関する探究活動に関する実践事例とともに、レポートの書き方についても具体的に示している。これは教科の視点から物事を捉えて思考する、学びの本質的な意義の中核をなす活動でもあるが、多様な学習機会を設定することで、「水産海洋科学」の学びと産業社会とを結びつけることができるよう工夫していただきたい。(「はじめに」より)
目次
第1章 海洋と生活
第1節 海洋の知識
1-1 生命をはぐくむ海
1-2 日本人と海
1-3 漁場の形成
1-4 漁場を左右する天候、海流
1-5 持続可能な漁業と里海
第2節 水産資源の育成と漁業
2-1 生育環境の改善
2-2 水産資源の増養殖
2-3 漁業の管理
2-4 漁業生産の技術
第3節 水産物の需給と流通
3-1 世界の水産物需給
3-2 日本の水産物需給
3-3 水産物流通の機構
3-4 水産物流通をめぐる新たな動き
第4節 食品としての水産物
4-1 水産加工原料
4-2 近年の水産加工品の動向
4-3 今後の水産加工のために
4-4 日本の魚食文化
第5節 船舶の役割
5-1 船舶とは
5-2 種類と大きさ
5-3 運航形態と操縦性
5-4 船舶の設備
5-5 安全航海のために
5-6 IT化の進む船舶
5-7 進化する船舶
5-8 自動運航船
5-9 緊急時の船の役割
第6節 海洋政策と海洋関連産業
6-1 海洋基本法の成立と海洋産業
6-2 海洋産業の種類と規模
6-3 水産資源の開発・利用
6-4 海上輸送産業
6-5 漁村の多面的機能と海洋性レクリエーション
第2章 海洋の科学
第1節 海洋の地形と海水の組成
1-1 地球の形と構造
1-2 海底地形
1-3 プレートテクトニクスと海底の構造
1-4 火山と地震
1-5 海水の組成
1-6 水温・塩分の鉛直構造
1-7 水温・塩分の水平分布
1-8 海水の流動
第2節 海洋と生命
2-1 進化と起源
2-2 海洋生物の分けかた
2-3 分布を広げる幼生
2-4 移動するプランクトン
2-5 生産者と消費者
2-6 生態的地位
2-7 さまざまな卵の性状
2-8 多様な繁殖様式
2-9 分解者
第3節 海洋と気象
3-1 大気と海洋の相互作用
3-2 海面における水温、塩分などの測定
3-3 化学特性の測定
3-4 最新の海洋観測機器
3-5 海上気象観測
第4節 海洋の資源・エネルギー
4-1 エネルギー資源と鉱物資源
4-2 海洋のエネルギー資源
4-3 海底の鉱物資源
4-4 海底資源開発と環境アセスメント
4-5 海底資源開発の取り組み
4-6 海洋エネルギーの利用
第5節 深海の世界
5-1 深海の環境
5-2 深海の生物
5-3 深海の利用と保全
5-4 最新の深海研究
第6節 海洋と環境問題
6-1 沿岸海域の環境保全
6-2 海洋の環境問題
6-3 森・川・海のつながり
第3章 水産の新しい展開
第1節 水産業の新しい展開
1-1 沿岸域の生業と暮らし
1-2 6次産業化の概要
1-3 6次産業化の活動事例
1-4 新たな資源の活用と地域活性化
第2節 水産物の高度利用
2-1 魚介類はなぜ腐りやすいのだろうか
2-2 保存性を高める技術
2-3 構成成分の特徴と機能
2-4 不可食部分の利用
2-5 魚介類のさらなる有効利用のために
第4章 海洋に関する探究活動
第1節 探究活動の概要
第2節 探究活動の進め方
プロフィール
吉田 次郎(東京海洋大学 名誉教授)
田中 栄次(東京海洋大学 教授)
有元 貴文(東京海洋大学 名誉教授)
馬場 治(東京海洋大学 名誉教授)
岡﨑 惠美子(東京海洋大学 客員教授)
大迫 一史(東京海洋大学 教授)
内田 圭一(東京海洋大学 教授)
坂本 泉(東海大学海洋学部 教授)
轡田 邦夫(東海大学海洋研究所 研究員)
秋山 信彦(東海大学海洋学部 教授)
田中 博通(東海大学 名誉教授)
喜多村 稔(海洋研究開発機構 地球環境部門 副主任研究員)
石川 智士(東海大学海洋学部 教授)
関 いずみ(東海大学人文学部 教授)
落合 芳博(東北大学大学院農学研究科 教授)
丸﨑 敏夫(元愛知県立三谷水産高等学校 校長)
堤 進(大分県立海洋科学高等学校 教頭)