究極の天測技法
六分儀と別売ソフトウェアがあれば、天体暦も海図も用いずに、自分の位置を緯経度で求めることができる「究極の天測技法」を詳しく解説。ジャミングなどによってあっけなく使用不能になるGPSに頼ることなく、高い精度で位置を知ることができる。天文航法の専門知識は必要としない。六分儀の使い方も解説。
書籍データ
発行年月 | 2014年5月 |
判型 | B5 |
ページ数 | 256ページ |
定価 | 3,300円(税込) |
ISBNコード | 978-4-303-20670-3 |
概要
現今の船長や航海士はGPS衛星航法装置に頼り切っており、天測などとは無縁の運航をしているのが実態である。
天測のような面倒なことをするのは古臭い人間のすることで郷愁に過ぎず、必要がないと公言する者さえいる。
だが、GPS衛星電波に対して外部からの意図的なジャミング(敵対的信号妨害)やスプーフィング(偽信号によるかく乱)という電波に対するソフトな妨害と、主としてGPS地上関連施設を破壊するなどのハードな妨害によりGPS衛星航法受信機は簡単に使用不可能になることが現実に起こっていることを知っているのだろうか。
ジャミングとは、通信を阻止するために、通信が行われている周波数に妨害信号(ノイズなど)を送ることであり、外国製のGPS妨害装置が市場に出まわっており、容易に入手できるから油断はできない。
GPSは電波が弱く、小さな出力でも妨害が可能なため、テロなどによる妨害や悪意ある悪戯により、甚大な被害を受ける蓋然性は高いのである。
このような障害による影響を回避するため、アメリカ政府はすべてのGPSユーザーに対してバックアップ手段を確保することを推奨している。
数十億円以上の価値ある外航船舶は他人に頼らない自力の測位手段である天測を安価なバックアップシステムとして、万が一に備えるべきである。そのためにはコンピュータを利用して精度が高くかつ簡便で、六分儀の用法さえ知っていれば誰でも測位が可能な天測計算技法が求められている。
現在、世界の航海者たちがあまねく使用している修正差法(位置の線航法)は1875年、フランス海軍のMarcq Blond de St. Hilaireが発表したもので、以来138年以上にわたって使われてきた。これは推測(仮定)位置を介在させ、曲線である位置の圏を直線近似して船位を求める手計算用の極めて巧妙な手法である。
しかしコンピュータを使用すれば、推測(仮定)位置、天体暦、位置記入用図を必要とせず、また修正差法の誤差を無視できる精度の高い計算を行うことができる。
ここで説明する技法は原理的には古くから知られているものであるが、巨大な地球儀を正射投影図法で描き、位置の圏の交点をその視点(画面中央)付近に表示させて交点緯経度を求めるところに特徴があって、いずれの天文航法書にも具体的な計算方法が言及されていないコンピュータ向きのまったく新しい手法である。
これは六分儀の取り扱いに習熟しているだけで、誰でも簡単に測位可能なシステムである。
天体暦からデータを読み取る必要はなく、海図や位置記入図上での作図も一切必要がない。修正差法では、推測(仮定)位置の入力が絶対不可欠であるが、その必要もない。計算の理論や知識も不必要で、手計算を一切行わず、天測の結果、位置が直ちに緯経度で求められるから、GPS衛星航法装置と同様に、これをブラックボックスとして取り扱うことができる。
推測位置を必要としないということは、地球上のどこにいるかまったくわからなくても、位置決定が可能であるということで、これが本書の前提である。
これを「究極の天測技法」と呼ぶことにし、詳しく説明することにしよう。
なお、本書では水星を含む太陽系実視天体の視位置を略算式から求める方法および63常用恒星の視位置を精密に求める手法と、転位問題を含む位置の圏の交点計算についても紹介する。
また、索星法(Identification of Stars)をStar Finderと名づけて利用方法を説明している。これは、あるとき、ある場所で観測可能なすべての常用天体の高度、方位角と、その恒星が属する星座を、見かけの姿と形で表示するもので、星座の視点は観測に便利なように決められている。(「はじめに」より)
目次
CHAPTER 1 究極の天測技法の原理と計算のアルゴリズム
1.1 究極の天測技法の原理
1.2 究極の天測技法のアルゴリズム
CHAPTER 2 位置決定上の諸問題
2.1 観測六分儀高度を真高度に改める場合
2.2 位置の圏の転位問題
2.3 誤差三角形の処理(最確位置の決定)
2.4 決定船位から目的地までの距離計算
2.5 決定船位を自動的に電子図上に表示させる方法
CHAPTER 3 天体の視位置の計算
3.1 海上保安庁の近似多項式による方法
3.2 略算式による方法
付表1 元期J2000.0年の常用恒星の平位と固有運動
付表2 惑星の視位置計算データ
CHAPTER 4 六分儀の使い方
4.1 どんな器械か
4.2 六分儀の構造
4.3 誤差の検出と調整
4.4 天体の高度測定
4.5 高度観測上の注意など
4.6 陸上物標の観測と腕前のチェック法
CHAPTER 5 日時の間隔と逆計算
5.1 年月日からユリウス日を求める
5.2 ユリウス日から年月日を求める
コラム:北極星時計
CHAPTER 6 天文航法に必要な諸式の誘導
6.1 高度式(余弦法則)の誘導
6.2 正弦法則の誘導
6.3 方位角式の誘導
CHAPTER 7 位置の圏の交点計算
7.1 2天体の位置の圏の交点2つを解析的に解く厳密な手法
7.2 3天体以上の観測による位置決定
7.3 位置の圏の転位問題
コラム:13日の金曜日
CHAPTER 8 精密な航程線の解の誘導
8.1 距等圏の実長計算
8.2 任意の緯度における子午線弧長1分の長さ(1海里)
8.3 子午線弧長の実長
8.4 漸長緯度の実長
CHAPTER 9 ソフトウェアの運用
9.1 計算に必要なデータ
9.2 ソフトウェアの運用方法
9.3 索星
9.4 2点間の距離計算
9.5 観測データの保存
CHAPTER 10 天文航法余話
10.1 航海の計算
10.2 精度の高い恒星視位置を求める手法
10.3 特殊な天測計算
10.4 夢見る人の方位角天測法―高度を観測しない位置決定―
10.5 1769年のタヒチにおける金星の太陽面通過を計算する
コラム:時報球
あとがきに代えて―船と星座
付録:位置の圏の交点計算
別売ソフトウェア『究極の天測』の紹介