天文航海の基礎
天文の基礎から天測計算にいたるまで、天文航海の基本的な知識を初学者向けに解説。高度方位式の導出には、球面三角公式ではなくベクトルを用いたことで、理解しやすくなっている。また、英国版天測暦の内容も扱う。日本版天測暦との違いや、日本版・英国版それぞれによる船位の求め方を紹介している。
書籍データ
発行年月 | 2020年2月 |
判型 | B5 |
ページ数 | 160ページ |
定価 | 2,970円(税込) |
ISBNコード | 978-4-303-20740-3 |
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概要
第1章 天文の基礎 天文航海に必要と思われる天文の基礎知識を記載した。我々は極座標(高度,方位)で天体位置を表すことが多いが,本書では直角座標(北,東,天頂)も用いた。後者を用いたほうが理解しやすい場合も多い。これらの説明のために,子午面図・地平面図の他に一般の天文航海の教科書には掲載されていない東西面図を新たに導入した。これらは製図の投影のようで解りやすいと思う。
式が冗長になるのを避けるため,変数名をできるだけ1文字で表した。例えば,緯度は“Lat”ではなく,天文学等で使用されている“ϕ”とした。最初は違和感があるとは思うが,慣れると非常に読みやすい。
第2章 時刻と暦 時を定める方法として,地球の自転,地球の公転,および原子の振動がある。基本的には,時は地球の自転量によって決められると考えておけばよい。
毎日時の天体位置を記載した数表を天測暦という。本書では,日本版および英国版天測暦の違いを簡単に説明した。今後,英国版に慣れておくことも必要であろう。
天測暦や天体位置計算式をWebから無償で入手することができるので,是非,ダウンロードして使用することをお勧めする。また,理科年表や天文年鑑等は,暦としても参考書としても利用でき有用であるので,併用するとよい。なお,本書は天測暦を参照することを前提とし,天体位置の計算には言及していない。
第3章 天体の高度と方位 天下り式に球面三角公式を使用することを避け,高度方位式の導出にはベクトルを用いた。ベクトルを用いることによって,天体の高度は天体の地位(位置)ベクトルと観測者の位置ベクトルの内積で表現できることがわかる。ベクトルを勉強してきた若い世代には理解しやすいと思う。
第4章 天体高度の測定とその改正 六分儀による測高法と高度改正法を解説した。天測に必要なのは地心高度であるが,我々は地表で観測するため幾何学的な修正と,大気を通して観測するため光学的な修正をしなければならない。大気は薄く存在するだけであるが,その扱いは結構難しいものである。
第5章 天文航海 天測計算表や天測暦に掲載されている例題を用い,計算方法および作図方法を扱った。また,英国版天測暦に掲載されている計算のみによる船位の求め方も紹介した。
第6章 船位の誤差 誤差は観測だけに限らずいろいろな場面で発生し,非常に複雑で予想できない場合もある。本書では,位置の線に含まれる誤差と,船位に含まれる誤差の基本的な内容を解説した。
第7章 補足 本書で使用した数式の導出や,球面三角公式や座標の回転により天体位置を求める方法を解説した。興味のある方は参考にして欲しい。(「はじめに」より抜粋)
目次
第1章 天文の基礎
1.1 単位と変数
1.2 地球
1.3 天球
1.4 日周運動と公転運動
1.5 太陽系
1.6 恒星
1.7 天体位置のずれ
1.8 天体の観察
1.9 天体の配置
第2章 時刻と暦
2.1 時刻
2.2 暦
2.3 天測暦
第3章 天体の高度と方位
3.1 高度方位角計算式
3.2 正中
3.3 出没と薄明
3.4 東西線通過
3.5 天体位置の微小変化
3.6 天体間角距離
第4章 天体高度の測定とその改正
4.1 六分儀
4.2 測高度改正
4.3 真出没高度と常用出没高度
第5章 天文航海
5.1 天体高度による位置の線
5.2 緯度の取得
5.3 船位の決定
5.4 コンパス方位の検証
第6章 船位の誤差
6.1 誤差の種類
6.2 位置の線に含まれる誤差
6.3 船位に含まれる誤差
第7章 補足
7.1 楕円の方程式
7.2 離心率
7.3 地心緯度と測地緯度
7.4 球面三角形
7.5 行列
7.6 方向余弦
7.7 座標の回転
7.8 座標の回転と鏡映による高度方位式の算出
7.9 天測計算表で用いる高度方位式
7.10 漸長緯度航法
7.11 大気差近似式
7.12 級数展開
7.13 ギリシャ文字
プロフィール
竹井 義晴(たけい よしはる)
1977 年 東京商船大学商船学部航海科卒業,航海訓練所入所
1984 年 一級海技士(航海)免状取得
1994 年 航海訓練所教授
2000 年 銀河丸船長,以降,銀河丸建造監督室長,日本丸船長等
2015 年 独立行政法人航海訓練所理事長
2016 年 日本水先人会連合会専務理事 現在に至る
その他
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