船舶金融論

―船舶に関する金融・経営・法の体系
(3訂版)

木原知己 著

船舶(とりわけ外航商船)の建造あるいは購入にかかる必要資金を供給する船舶金融について、金融論、船主経営論、さらには海商法とも関連付けて体系化し、客観的かつ多面的に、そして実用的に、わかりやすく丁寧に解説した、船舶金融分野のバイブルともいえる一冊。

書籍データ

発行年月 2024年9月
判型 A5上製
ページ数 344ページ
定価 4,950円(税込)
ISBNコード 978-4-303-15032-7

概要

 本書は船舶(とりわけ、外航商船)の建造あるいは購入にかかる必要資金を供給する「船舶金融」について解説するものであり、船舶金融に従事されている金融マンはもちろんのこと、船舶金融に些かでも興味を抱かれる有為なる学生の皆様、これから海事産業で活躍されるであろうフレッシュマンたち、既に海運実務に携わっておられる社会人諸氏、そして海事の分野を超えて広く金融ビジネスに関係する多くの方々に、何らかの有用な材料を提供することを目的としています。
 本書が皆様のビジネスの一助となれば、それは望外の喜びです。(「はじめに」より抜粋)

目次

序章 船舶金融に関係する面々
 1. 海事クラスター(Maritime Cluster)とはなにか
  (1)海事クラスターの特性
  (2)海事クラスターの目的
  (3)日本海事クラスターの特徴と課題
 2. 船舶金融に関係する主な面々
  (1)オペレーター(Operators)
  (2)造船者(Shipbuilders)
  (3)損害保険会社(Insurance Companies)
  (4)船主責任相互保険組合(P & Iクラブ)
  (5)船舶管理会社(Ship Management Companies)
  (6)船舶ブローカー(Shipping Brokers)
  (7)その他の面々

第1章 船舶金融とはなにか
 1. 船舶金融の定義
  (1)financial scheme designed by D, M & E
  (2)船舶の取得
  (3)DとEのバランス
 2. 船舶金融の構成
  (1)D(Debt)の提供
  (2)E(Equity)の提供
  (3)M(Mezzanine)の提供

第2章 船舶融資とはなにか
 1. 船舶金融の大半を占める船舶融資
  (1)資金調達サイドの事情
  (2)資金提供サイドの事情
 2. 船舶融資の定義
  (1)船舶所有者(shipowners)
   deviation:戦後日本海運の復活に至るいばらの道
   deviation:パナマ運河
  (2)外航商船
   deviation:人類による海上交易事始め
   deviation:錨(アンカー)
   FAQ 1:不動産投資と船舶投資の相違点
   deviation:トン(ton)
   deviation:ノット(knot)
   deviation:船の雑学
   FAQ 2:内航商船と船舶融資
  (3)建造あるいは購入
   deviation:売船 …船主と銀行の長い一日
  (4)金融機関
   FAQ 3:金融機関の非合理的競争
  (5)船舶抵当権
   FAQ 4:船舶抵当権を設定する理由
 3. 船舶融資の類型
  (1)オペレーター向け船舶融資(CBL)
  (2)狭義の船主向け船舶融資(PBL)
  (3)船舶価値に依拠した船舶融資(ABL)

第3章 船舶融資可否判断 ―序論
 1. 船舶融資可否判断プロセスにおける3つの眼
 2. 船舶融資可否判断におけるリスク
  (1)リスクとはなにか
  (2)リスクの認定と管理
 3. 船舶融資可否判断におけるリスクに対するスタンス
  (1)ハインリッヒの法則に基づくスタンス
  (2)エージェンシー理論に基づくスタンス
  (3)プロスペクト理論に基づくスタンス
  (4)ダチョウ症候群,認知的不協和に基づくスタンス
  (5)「アキレスと亀」のパラドックスに基づくスタンス

第4章 船舶融資可否判断 ―本論
 1. ストラクチャーチェック
  (1)プロジェクトにかかるビジネスリスク
  (2)プロジェクトに関係するプレーヤーにかかるリスク
 2. プロジェクトリスク分析
  (1)船主関連リスク分析
   FAQ 5:狭義の船主による傭船者宛て財務情報の開示
  (2)傭船関連リスク分析
   deviation:INCOTERMS
  (3)船舶関連リスク分析
   FAQ 6:海外造船所建造案件
 3. キャッシュフロー分析
  (1)船舶融資にかかる債権保全の確認および分析
   FAQ 7:代表者個人債務保証を徴する理由⁉
   deviation:エクソン・ヴァルデス号の油濁事故
  (2)キャッシュフロープロジェクション分析
   FAQ 8:狭義の船主が円建て変動金利借入融資を好む理由
 4. 推進意義分析
  (1)案件にかかる収益性
   FAQ 9:リスクとリターン
  (2)案件にかかる社会性
 5. 経営環境分析
  (1)金融機関の内部要因についての考察
  (2)金融機関の外部要因についての考察

第5章 船舶融資にかかる契約
 1. 金銭消費貸借契約
  (1)金銭消費貸借契約の法的性質
  (2)船舶融資にかかる金銭消費貸借契約書の主要規定
 2. 債権保全にかかる契約
  (1)船舶竣工引渡し前の債権保全にかかる契約
  (2)船舶竣工引渡し後の債権保全にかかる契約
   deviation:Mayday

第6章 モニタリング
 1. モニタリングの本質
   FAQ 10:情報の非対称性と船舶融資
 2. モニタリングの実際
  (1)船主関連リスクモニタリング
  (2)傭船関連リスクモニタリング
   FAQ 11:傭船者からの傭船料引下げ要請と金融機関の対応
  (3)船舶関連リスクモニタリング
  (4)債権保全モニタリング
  (5)キャッシュフロープロジェクションモニタリング
   FAQ 12:LTV条項抵触時の金融機関の対応
 3. 船主に不測の事態が発生する場合の対応
  (1)船舶竣工引渡し前における船主の経営悪化および経営破綻
  (2)船舶竣工引渡し後における船主の経営悪化および経営破綻

第7章 船舶金融の進化
 1. SDGsと船舶金融
   FAQ 13:GHG削減と船舶融資
 2. 発展型あるいは応用型の船舶融資スキーム
  (1)JOL(Japan Operating Lease)
  (2)プロジェクトファイナンス(project finance)
   FAQ 14:中古LNG船のリファイナンス
  (3)シンジケートローン(syndicated loan)
   FAQ 15:船舶融資業務を始めるにあたっての留意点
 3. 船舶金融の深化(D→D→D, M & D→D, M & D)
  (1)アセット価値重視の船舶金融
   FAQ 16:融資期間の短縮
  (2)中古船単独投資にかかる船舶金融
   FAQ 17:Sale and BBC back
  (3)中古船共同投資にかかる船舶金融
  (4)貸出債権のオフバランス化
  (5)船舶の流動化
  (6)LBOファイナンス
  (7)MBOファイナンス
  (8)ESGファイナンス
  (9)船主救済型ファンド
  (10) capital markets
   FAQ 18:船舶融資の魅力
 4. 船舶金融の進化(D, M & D→D, M & D→)
  (1)船舶金融の社会的使命 ―B to C(B2C)の視点―
   deviation:船舶の区分所有
  (2)船舶金融の社会的使命 ―社会公共の視点―
   deviation:わが国の領海,排他的経済水域

参考文献
索引

プロフィール

木原 知己(きはら ともみ)
1984年4月九州大学法学部卒業後、日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)入行。主として船舶金融を担当し、営業第八部長(船舶・鉄道担当)、高松支店長を最後に同行退職。2005年に都内金融機関に入行し、船舶金融チームを立ち上げる。2011年青山綜合会計事務所顧問に就任し、その後、執行役員就任、パートナー、海事スーパーバイザーを歴任。現在はセンチパートナーズ株式会社代表取締役として、船主向け経営コンサルティングの傍ら、ファイナンスアレンジなどに従事する。早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師(「船舶金融法研究」講座担当)、早稲田大学海法研究所招聘研究員、山縣記念財団評議員・「海事交通研究」編集委員、海事振興連盟三号会員、海洋立国懇話会理事運営委員、各種セミナー講師、SDGs関連企業の社外取締役などを務める。専攻分野は船舶金融論・船主経営論・海洋文化論。

著書一覧
「シップファイナンス―増補改訂版」(海事プレス社)
「船主経営の視座」(海事プレス社)
「波濤列伝―幕末・明治期の“夢”への航跡」(海文堂出版)
「号丸譚―心震わす船のものがたり」(海文堂出版)
「躍動する海―さまざまに織りなす「海」の物語」(海文堂出版)

編著一覧
「船舶金融法の諸相―堀龍兒先生古稀祝賀論文集」(成文堂)
「日本の海のレジェンドたち」(海文堂出版)
「船の仕事 海の仕事」(かまくら春秋社)