水産資源の変動と水産加工業

―イカ加工業者の生き残り戦略

刀禰一幸 著

水産資源の変動に大きく影響を受ける水産加工産業が生き残るためにはどうしたらよいのか。近年、急激な資源の減少が見られる日本のスルメイカを主な原料として、経営展開を行ってきたイカ加工産業。本書では、イカ加工産業に焦点を当て先行研究のレビューを通じて、戦後から現在までの資源の変動に対し、イカ加工業者がどのように対応してきたのか、その実態を明らかにする。

書籍データ

発行年月 2026年9月
判型 A5
ページ数 164ページ
定価 3,630円(税込)
ISBNコード 978-4-303-56340-0

概要

 この10年、スルメイカ資源を取り巻く環境は大きく変化し、いか産業は大きな転換期を迎えています。漁獲量の減少は原料供給や価格形成に大きな影響を及ぼし、その影響は漁業のみならず、加工、流通、販売、消費にまで広がっています。現在のいか産業は、大きな変革の中にあると言っても過言ではありません。
 全国いか加工業協同組合では、こうした状況を踏まえ、産業の現状を客観的に把握し、その変化の実態を正しく理解することが重要であると考えてまいりました。本書は、そのような問題意識のもとにまとめたものです。
 本書では、スルメイカ資源の減少という現象だけでなく、それに対して加工業者や流通関係者がどのように対応してきたのかを体系的に整理しています。また、マイワシ産業との比較を通じて、水産加工業が資源変動にどのように向き合い、適応してきたのかについても考察しています。
 将来、スルメイカの資源状況が好転したとしても、それを支える加工·流通基盤が失われていては、その資源を十分に活用することはできません。資源と産業は相互に支え合う関係にあり、その両方を維持していくことの重要性を、本書から読み取っていただけるものと思います。(「発刊にあたって」より抜粋)

目次

発刊にあたって
第1章 問題意識の所在と研究目的
 1.1 研究の背景
 1.2 問題意識の所在
 1.3 目的及び研究対象
 1.4 分析視角及び意義と研究方法
 1.5 本書の構成

第2章 先行研究のレビューと本研究の意義
 2.1 日本のマイワシ漁業とマイワシ加工産業の対応―戦後から現在を対象に―
 2.2 イカの種類別特徴
 2.3 日本のスルメイカ漁業とイカ加工産業の対応―戦後から現在を対象に―
  2.3.1 戦後から1964年までの対応
  2.3.2 1965年から1986年までの対応
  2.3.3 1987年から2015年までの対応
  2.3.4 2016年以降の対応
 2.4 本章の小括

第3章 イカ類原料供給の実態
 3.1 漁業種類別の生産動向
 3.2 沖合底びきによるスルメイカ生産の実態
  3.2.1 目的及び研究方法
  3.2.2 三陸地区スルメイカ漁の概況
   3.2.2.1 三陸地域の位置づけ
   3.2.2.2 三陸地域の沖合底びき網漁業の概要
  3.2.3 三陸沖底スルメイカ漁の自主規制の影響
   3.2.3.1 漁業種類別のトンAC消化動向
   3.2.3.2 三陸地域の沖底スルメイカ漁の自主規制
   3.2.3.3 スルメイカの用途別原料
   3.2.3.4 三陸各地区における漁獲物の品質の特徴
   3.2.3.5 三陸地域のスルメイカ漁における沖底の自主規制による原料調達への影響
  3.2.4 沖合底びきによるスルメイカ生産の実態 ―小括―
 3.3 沖合いか釣りによるスルメイカ生産の実態
  3.3.1 目的及び研究方法
  3.3.2 沖合いか釣り漁業と船凍イカ
   3.3.2.1 国内イカ類漁獲量・漁獲金額の動向と生産構造
   3.3.2.2 「船凍イカ」の概要
  3.3.3 船凍イカの生産動向
   3.3.3.1 船凍イカの主要水揚港
   3.3.3.2 銘柄別の生産・価格動向
  3.3.4 船凍イカの仕向け動向
   3.3.4.1 船凍イカの仕向け先と2010年時点での動向
   3.3.4.2 「鮮魚代替(端売り用)」・「鮮魚代替(業務用)」
   3.3.4.3 「冷凍食品(刺身)」
   3.3.4.4 「一夜干し・丸干等」
   3.3.4.5 漁業用餌料
  3.3.5 沖合いか釣りによるスルメイカの生産の実態 ―小括―
 3.4 輸入実態
  3.4.1 目的及び研究方法
  3.4.2 貿易統計の分析結果
   3.4.2.1 貿易統計における輸入イカの概要
   3.4.2.2 「冷凍いか」の種類別輸入構成
   3.4.2.3 「調整品」の種類別輸入構成
  3.4.3 聞き取り調査結果の分析
   3.4.3.1 聞き取り調査の概要
   3.4.3.2 「冷凍いか」の形態別輸入構成
   3.4.3.3 「調整品」の形態別輸入構成
  3.4.4 日本のイカ輸入における変化の実態
     ―貿易統計と聞き取り調査の結果を踏まえて―
   3.4.4.1 日本のイカ輸入における変化の実態
   3.4.4.2 スルメイカの減産分をイカ輸入で補完できない要因
  3.4.5 輸入実態 ―小括―

第4章 イカ加工製品の市場 ―POSデータの分析―
 4.1 目的及び研究方法
  4.1.1 先行研究と問題の所存
  4.1.2 本研究の目的と方法
 4.2 POSデータの集計結果―低次加工品と高次加工品における違い―
 4.3 小売業における低次加工品の販売実態
 4.4 小売業における高次加工品の販売実態
 4.5 本章の小括

第5章 イカ加工業者の実態把握―ケーススタディとインタビュー調査結果―
 5.1 低次加工業者と高次加工業者の個別企業の経営対応の実態
  5.1.1 はじめに:取り巻く状況
  5.1.2 先行研究の整理
  5.1.3 目的と研究方法
  5.1.4 調査結果
   5.1.4.1 低次加工業者C社の事例
   5.1.4.2 高次加工業者G社の事例
   5.1.4.3 調査結果の全体像
  5.1.5 低次・高次加工業者の経営対応
 5.2 本章の小括

第6章 イカ加工業者の生き残り戦略
 6.1 アンゾフの成長マトリクスを用いたイカ加工業者の市場戦略オプション
 6.2 バリューチェーン分析によるイカ加工業者の生き残り戦略
 6.3 本章の小括

第7章 本書のまとめ
 7.1 研究の背景
 7.2 本研究の内容
 7.3 結論
コラム 今後の展望

あとがき
謝  辞
索  引