区間分析による評価と決定

田中英夫・円谷友英・杉原一臣・井上勝雄 著

著者代表の田中英夫氏は長年の研究実績が高く評価され、2010年7月下旬にバルセロナの国際会議(IEEE)で名誉ある「Fuzzy Systems Pioneer Award」を受賞

価値観の多様化が進むなか、あいまいさを区間で表現する方法の便利さ、理解の容易さ、実用性の利点などから、応用統計の分野で区間回帰分析が注目されている。本書は2007年のISI国際会議で招待発表を行った田中が中心となり、区間回帰、区間AHP、区間DEAの3つの問題を取り上げて解説。Excelのソルバーによる解法も示す。

書籍データ

発行年月 2011年9月
判型 A5
ページ数 146ページ
定価 2,200円(税込)
ISBNコード 978-4-303-72395-8

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概要

ファジィ回帰分析の研究は30年以上も前に始まり、その後、決定問題におけるファジィ解、よりわかりやすい区間解に関する多くの論文が発表されている。これらの論文では、問題の定式化とその解法に重点が置かれていた。本書では、あいまいな状況では、通常のような実数値よりも区間値のような幅を持ったあいまいな評価が適しているという観点からの研究をやさしく述べている。問題があいまいであっても、またそうであるからこそ余計に、唯一の正解が欲されるという一面もあるだろう。しかしながら、いまの時代は、価値観の多様化が進み、また、それが新しいものを生み出す源泉になっているとも言われる。日ごろから何かにつけて柔軟な対応を余儀なくされ、それに慣れ親しみつつある我々にとっては、あいまいな問題に対して、あいまいな解を求めることも、意外になじみ深く、受け入れやすいのではないだろうか。そして、あいまいな解を得ることが果たす役割やメリットを改めて考えてみることにも価値があると思う。このような趣旨が現実の問題において必要であることを実感できるような例題を挙げ、その解法をわかりやすく述べ、読者が種々の問題に適用できるように工夫した。また区間評価による決定問題にも言及している。さらに、本書が契機になって応用研究が活発になることを期待し、それを推進するツールとして、誰でも使える区間分析のソフトウェアを提供(有償)している。

本書で取り上げた3つの問題、すなわち第3、4、5章では、「現実問題のあいまいさに対応して、現実問題の解はあいまいであるべきである」という思考が、可能性という観点から定式化されている。これはおおむね次のように説明できると考える。第3章の区間回帰では、与えられる実測データの可能性と必然性という観点からあいまいさを考慮して、区間回帰モデルというあいまいな解が得られた。通常の回帰モデルでは、現象のあいまいさが観測誤差として考慮されているが、区間回帰では、このあいまいさをモデルのあいまいさと見なし、可能性または必然性の観点からの区間回帰モデルを用いている。第4章の区間AHPでは、意思決定者が与える一対比較値の相互関係にある不整合性というあいまいさを可能的に捉えて、あいまいさを反映した区間ウエイトが得られた。第5章の区間データを用いたDEAでは、与えられるデータが表すあいまいさを反映して、効率値が区間値というあいまいな解として得られ、さらに区間DEAでは、楽観的評価から悲観的評価まで評価の多様性を踏まえて、区間効率値があいまいな解として得られた。本文でも紹介したように、第3、4、5章で取り上げた問題の解法は線形計画法または2次計画法によっている。簡易的方法としてエクセルのソルバー機能で解けるが、高負荷の入力作業が必要である。この困難な作業を自動的に行うエクセルのマクロ・プログラムを開発し、それを用いて容易に解を得る方法を第6章で解説した。(「おわりに」より)

目次

第1章 区間分析による評価と決定とは

第2章 区間分析の数学的準備
     2.1 区間表示
     2.2 区間演算
     2.3 区間確率
     2.4 区間データの検索

第3章 区間回帰分析
     3.1 統計的回帰分析
     3.2 区間回帰―実数値データの場合
     3.3 区間回帰―入力は実数値、出力は区間値の場合
     3.4 2次計画法による区間回帰について

第4章 区間AHP
     4.1 AHP
     4.2 実数データに対する区間AHP
     4.3 区間データに対する区間AHPモデル
     4.4 2次計画問題への拡張
     4.5 まとめ
     付録:固有値法における強推移律と整合度の関係

第5章 DEA(包絡分析法)
     5.1 実数データによる効率値
     5.2 区間データによる効率値
     5.3 発展編
     付録

第6章 エクセルによる解法と例題
     6.1 線形計画法
     6.2 エクセルのソルバー機能による解法
     6.3 区間回帰分析
     6.4 区間AHP
     6.5 DEA(実数データと区間データによる効率値)