情報は誰のものか

―農業、医療、エネルギー、オープンガバメント、ダイバーシティとIT

独立行政法人 情報処理推進機構 「情報は誰のものか」編集委員会 編

日本図書館協会選定図書

日本が抱える様々な経済・社会的課題をITの活用によって解決することを目的として情報処理推進機構が産官学のメンバーで立ち上げた「社会課題ソリューション研究会」の成果をまとめた。各分野で、IT、インターネットによってどんな革新的な展開が始まっているのか、多くの実例を示すとともに、将来の方向性も示唆する。

書籍データ

発行年月 2015年1月
判型 四六
ページ数 160ページ
定価 1,540円(税込)
ISBNコード 978-4-303-73394-0

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概要

 この本を手に取られたみなさんはインターネット世代でしょうか。それともアナログ世代でしょうか。

 どちらの世代の人でも、いまや生活・仕事・遊びのあらゆる分野において、インターネットを使ったりその恩恵にあずかったりしない人はいないといっても言い過ぎではないでしょう。

 では、インターネット社会のなかで、何が最も変わったと感じておられますか? 大半の人は、情報が簡単に手に入るようになり、また、簡単に発信できるようになったと感じておられることでしょう。

 インターネットを通じてITを駆使することにより、「紙とエンピツ」の時代では考えられなかったような情報の爆発的な流通が実現しています。

 こうした状況の下で、大量かつ多様な情報が瞬時に自由にやりとりされるようになり、情報の独占が崩れ、既得権益が明るみに引きずり出され、岩盤規制に大量の疑問符が突きつけられることとなりました。

 一方で、「情報化」という言葉が何か古い響きを感じさせるのは、ITを単なる省力化や効率化のみに用いる時代が過去のものとなり、インターネット社会におけるITは、これまでにないビジネスモデルを実現可能にし、新たな価値を生み出す源泉となっていることを示唆しているのでしょう。

 我が国の経済はバブル崩壊後の長期にわたる低迷を脱し、持続的な成長に向けた新たな段階を迎えつつあります。こうした成長を加速し確かなものとするために必要とされる社会課題の解決や新たな価値創造に、インターネット社会におけるITに対しては、大きな役割と貢献が期待されます。

 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)では、こうした新たな局面を迎えているITを通じて、我が国が直面するさまざまな社会課題に対して、何らかの解決策(ソリューション)の糸口や新たな価値づくりのきっかけを提示できるのではないかという問題意識から「社会課題ソリューション研究会」(以下、「研究会」という)を立ち上げ、検討を重ねてきました。

 本書は、本研究会の検討結果を広く公開し、今後のさらなる議論に資するとともに、研究会のとりまとめのなかでは書ききれなかった思いや舞台裏も記すことにより、ITによる価値創造に多くの方が関心を持ち実践してもらうことで、我が国の経済・社会の持続的な発展が実現されることにささやかながらでも寄与したいという思いで作成しました。

 第1部は、こうした研究会のとりまとめに至る舞台裏や、事務局を務めたメンバーの思いを記したものです。第2部の研究会のとりまとめ(報告書)そのものを読んでいただく前のイントロとして気楽にお読みいただければと思います。(「刊行にあたって」より抜粋)

目次

第1部 社会課題の解決とIT
第1章 情報とIT
     1 インターネット社会と情報
        ・IT環境の進化が生み出したもの
        ・情報とは何か
        ・インテリジェンスと情報
        ・物やサービスと情報
        ・インターネット社会における情報の価値
     2 社会課題解決とIT
        ・情報の独占が生むもの
        ・情報流通革命と旧体制の崩壊
        ・新たな価値づくりへ
第2章 社会課題ソリューション研究会での検討経緯
     1 検討分野設定の背景
     2 検討開始と意外な展開
        ・農業分野の検討開始とショック
        ・医療
        ・エネルギー
        ・オープンガバメント
        ・ダイバーシティ
     3 研究会における議論の過程

第2部 社会課題ソリューション研究会最終とりまとめ
1 研究会の概要
2 産業分野での課題解決に向けたITの役割
   (1) ITがもたらす革新の3つの観点
   (2) 農業、医療、エネルギーの各分野でITがもたらす革新
   (3) 「情報は誰のものか」
3 社会構造の高度化を支えるITの役割
   (1) オープンガバメントの3要素とIT
   (2) ダイバーシティの役割とIT
   (3) オープンガバメントやダイバーシティの目的とITの役割
4 全体を通じてのまとめ
   (1) インターネット社会においてITがもたらす影響
   (2) ITによる社会課題の解決に向けて

参考資料―現地訪問・調査・意見交換の経緯
1 現地訪問
   (1) 横浜スマートコミュニティ
   (2) TIS御殿山データセンター
   (3) 病院関係者
   (4) 医療関連企業
2 意見交換
   (1) 農業関連団体
   (2) 電力会社
   (3) 敬愛まちづくり財団(マイヤーズ博士)
   (4) 放送事業者
   (5) 通信事業者
   (6) 現役の医師(勤務医、大学医学部教授)へのインタビュー
3 カンファレンス聴講
   (1) JUASスクエア
   (2) JUAS FUTURE ASPECT
   (3) ヘルスケアデバイス展2013
4 そのほかの調査事項
   (1) 社会課題の解決に向けた我が国政府の取り組み
        ・「スマート農業の実現に向けた研究会」検討結果の中間とりまとめ
        ・データカタログ「data.go.jp」
        ・オープンガバメントアイディアボックス
   (2) 社会課題の解決に向けた地方自治体の取り組み
        ・福井県鯖江市
        ・神奈川県横浜市
        ・福岡県八女市
        ・埼玉県川越市
        ・福島県会津若松市
   (3) 社会課題の解決に向けた民間の取り組み
        ・Linked Open DataチャレンジJAPAN
        ・Open Knowledge Foundation Japan
        ・Code for Japan
        ・Open Street Map Foundation Japan
5 海外における調査事項